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模型イベントレポート → いまここ
●はじめに
2019年(令和元年)晩夏、8/24(土)、25(日)、島根県(西部)江津市にて、第3回ごうつホビー祭りが開催されました。
場所は
パレットごうつ。
このイベントは、「東京からアクセス利便性的に一番遠い町」として地理の教科書にも実際に載り、近隣市民の定番自虐ジョークにもなりつつある、
「
江津(ごうつ)市」を盛り上げようと、
江津理工クラブさんが主催されている催しです。
そして、浜田市の
地球堂模型さんをはじめとした、山陰模型専門店会が協賛しています。
2017年より毎年8月末に開催され、今年で3回目。
回を増すごとにパワーアップしている、自由の気風溢れる祭典。
このオフレポを書いているのは、第1回目から模型展示で参加させて頂いている、残田響一という者です。
以下、しばらく拙文レポートにお付き合い頂ければ幸いです。
●ごうつホビー祭りについて(about)
自分(残田)はこの祭りに参加するようになって、今年で3回目です。
そう、ホビー祭り第1回から参加させてもらっています。
第1回のオフレポはこちら
それ以来、この祭りのファンとなり、毎年の晩夏は、このごうつホビー祭りに当てるようになっています。
何が良いって、それは、この祭りが、参加者皆の自発的で自然な「盛り立て」によるもの……
要するに、「自由」の気風があり、年々盛り上がっていっているところです。
今回、祭りの前に、作品を作りながら、「非公式応援(賑やかし)サイト」を作ったりしていました。
第2回のオフレポも、少しずつ書いていました。
第3回ごうつホビー祭り応援ファンサイト(非公式)
今年(第3回)のテーマは、
「新たな拡がりへ」。
ホビー(楽しさ)の可能性を狭めることなく。
そして集まった皆さんが、いろいろな表現を見て、新しい可能性に触れること。
バンド演奏や、ボードゲーム、eスポーツ、イラスト展示など、様々な催しが行われるこの祭りですが、
このレポートでは、自分が出展参加・受講させて頂いた「模型展示会」と「模型講座」について、レポートさせていただきます。
●スケールモデル
AFV(戦車模型)編。力作の数々もさることながら、最後のですが、
でかい(率直)。
スケールがおかしい。この2台は、それぞれ違う制作者の方の作品なのですが、それがこのイベントに揃い踏み、という。
ハッチは開くわ、ライトどころかウィンカーは点滅するわ、ラジコン駆動するわ。さらには、
なんということでしょう、リアル自衛隊コラボでございます。もちろん自衛隊の方が許可OKしてのことですが、しかしな。
20年前、制作者の方が子供のころに組んだキットを、ホコリを落としてリメイク塗装・レストアした代物。
わたくしこういう「幼年期の延長な工作物語」に弱いのよ(涙)
解説パンフレット付。20年前のを倉庫に入れていたものなので、ダメージの受け度合いが激しくて。
ホコリを落とすのがかなりしんどかったご様子。それがどうでしょう、この復活度合いですよ。
はえーよ(失礼!)。こないだガールズ&パンツァー最終章第2話放映されたばっかだべ。
いや、すでに組んだキットを、このタイミングで、ということでしょうが、
しかしこういうことが出来、見るこちらもテンションが高まるのが、現在進行形の戦車神話、ガルパンサーガなのであります。
ファインモールドさんのブースです。この他にも、ガルパンリボンの武者のキットや、ジャンクパーツの500円大盤振る舞いをされていました。
拘りが随所に見える紫電改、波の表現がすごい潜水艦……。
ここを押したら戦闘機のプロペラが回ります(ネタバレ)。
今年もこの巨大体積なる荷物でいらっしゃいました(お疲れ様です!)、
しっぷ氏の巨大スケール戦艦ラジコンです(水の上で運転出来ます)
この方は毎回、この巨大スケールの戦艦を持って来られるのですが、今回、作成途中の作品を持ってこられていて。
しっぷ氏はいくらか恥ずかしげにしておられましたが、しかしモノを作っている人間からすると、この「作成途中」作品というのは、また非常に勉強になるものです。
まして、このサイズのラジコン船ですからね……。
ジャンルがジャンル。作ろうとするだけで、ただ者ではない。
また、デフォルメされたタグボートのデザインが大変好みでして。「夏休みの工作」をいざなうというか、
昔の工作雑誌的な「材料リスト」が書かれていて、大変好印象です。
今回、「らき☆すた」や「けいおん!」のラッピングがされたカーモデルがありました。
そして、ホビー祭り総合受付では、京アニへの義援金箱が設けられておりました。
(ご冥福をお祈り申し上げます)
●ガンプラ
今回、この赤メッキサザビー、なんとサウンド装置付きの台座に乗っておりました。テクノロジー度合いがどんどん上がっているごうつホビー祭りでございます。
ヒロイック系も量産機系も、今回、ポージングエフェクトに拘ったものが多かったですね。
痛恨の極みで写真を撮るのを忘れたのですが、オルフェンズ外伝のアスタロト・リナシメントや、
ビルドファイターズA(アメイジング)再現の「ザクアメイジング・オリジン」なモデルを持ってこられた方がいらっしゃいました。
自分もこのシリーズは大変好みでして、通好みなチョイスや、改造のセンスが、印象に残っております。
※2019/09/02追記
後日、制作者
「Aさん」よりご連絡を頂き、
この作品の写真をご提供頂きました。
ありがとうございます! 自分が写真を忘れたのを残念がっていたのは、こういう代物であったからですよ! ぜひご覧ください。
実は今回一番クラスにお気に入りな作品がこちら。
量産機・リーオーに、クロスボーンガンダムのバーニアを組み合わせ、それを砂漠(デザート)仕様にするという。
コンセプトの統一性が大変よろしく思います(偉そうな評論失礼!)
●キャラクターモデル編
フレームアームズ・ガール(FA:G)も、模型展示会ではもう「王道の定番」化してきましたね。
少なくとも、それを出して「キワモノ」扱い、ってのはいつのどこの話?って具合です。
つまり、皆々様が「俺の娘!」な俺設定改造ガールを次々に当たり前のように出してきているというわけです。とても良い傾向です。
あれ? この桃色のフレームアームズ(ラピエール)、「ガール」展開していたっけ……?
(そしてよく見て、装備品フルスクラッチであることに皆が気づき、騒然となるパターンを数回この会場で見た)
制作者の方に「この世界観と狂気、平野耕太的な何かを感じるのですが……」と申し上げたら、
「ヘルシングの最後の大隊は確かに意識しました」とコメントを頂いた、オリジナル世界観・ミリタリー×少女なモデルです。
細部のディテールが「飾り」を通り越して「ハードな世界観」になっております。
しかしデザインが秀逸ですね……
さて、
ドール沼のお時間がやってまいりました。
いや、このわたくしも、最近アゾンのカスタムリリィシリーズからドール的な何か深い沼に入り込んでしまいまして。
そこにこれです。FAGや装甲少女のキットにウィッグを付けたドール改造。
少女性とメカニック性を、世界観のもとに、オリジナリティあるセンスで纏め上げたもの。左の娘さんの服は自作だそうです。
いやぁ良いですねぇ。こういう作品にぜひとも影響されたいですねぇ。
(そして物販で自分も
ドールを3体買うという始末)
・ガルパンのガレージキット。キャラクター性(萌え)を成り立たせている精密でヴィヴィッドな塗装。
アニメファンも模型ファンも同時に魅了する類の仕上がりです。
ごうつホビー祭りのマスコットキャラクター・りこちゃん。
なんと3Dプリンタ造形のフルスクラッチ。
もはや来年は3Dプリンタ出力体験の流れは不可避ですね主催さん?(おいおい)
●KATOさんのブース
鉄道模型派&ジオラマ派のモデラなら、お世話になっていないということが
物理的にあり得ないKATOさん。
今年も来ていただきました!今回のブース内容は……
<
(1)豪華特急車両「瑞風(みずかぜ)」新商品情報&山陰の海際をイメージしたとおぼしき巨大ジオラマ。
また、デジタル運転&サウンドを搭載したエンドレスで、常時、説明されていらっしゃいました。
<
(↑作成ミニジオラマ)
(2)ジオラマ教室。小さいジオラマをその場でレクチャーして頂きながら、作ることが出来ます。
しかしやはりプロのレクチャー、仕事(素材の「盛り」)に無駄がありません。
さっと仕上げているようで、情報量がパない。
(3)祭り終盤になって、モデラー向けに
KATOさんの誇るジオラマ素材技術の解説。
会場の出展モデラの皆さんがほぼ全員集まって、その講義を
超絶熱心に聞いていました!
●自分たちの展示
自分(残田)の展示はこちらのジオラマ3点です。
昨年も出展させて頂いた、自分の妄想ファンタジー世界「レッズ・エララ神話体系」の再現ジオラマ
「ロストガール・ラストダンス」(色調改造)
と、戦場の追悼をイメージした「夕鶴」。
そして今回の準新作は、第1回に出展したジオラマを改造した、「雪解け」。
そしてこちらは、はるばる九州は長崎からいらして頂いた、
義実たかさんによる
「リーオー・ルクボルグ」。ゴブリンスレイヤーの見立て改造です。
そして今回、義実さん、非常に痛恨の極みだったのがこちら。
なんと前髪を長崎のご自宅に忘れる、という悪夢。傍で見ていた自分も「oh……」と。
リカバー策は思いつくものの、しかしうまくいかず。この悪夢、義実さんのダメージは相当なものでした……。
皆さん、ぜひ義実さんのこのツイートの「正式版」をご覧になってください。これが本当のやりたかった姿なのですから。
●瀬川たかし先生の模型講座
今回、東京から、プロジオラマモデラー・
瀬川たかし先生が、島根まで来訪し、ホビー祭り期間中、模型講座を開催してくださることになりました。
1日目は「サビ塗装の基礎」
2日目は「朽ちた遺跡のある情景」
素材や工具は瀬川先生が事前にご用意くださったもの。
その材料費込みだとしても、この安さってどうなの?な授業料。
凄い話です。
だって瀬川たかしさんってお名前の作品、モデルアートで何回見たよベイベ?(アメリカン)
素材と一緒にレジュメ(ジオラマ作業工程表)を頂き、それに沿って、極めて理論的に塗装表現、ジオラマ作成が進められていきます。
非常に勉強になります。
その理論的工作(セオリティカル・モデリング)は、瀬川先生の「
素材に対する深い理解」と「
自然表現の分析」に支えられています。
ほとんど「科学」です。そして手を動かして、レクチャー通りに再現してみると、「なるほど!」と感嘆すること。
実際、その通りに講義会場で「おお!」「なるほど!」と声が連発するほどです。
自分のようなへっぽこモデラ(技術力の低さ、不器用さには定評がある)でも、これだけのものを仕上げることが出来ました。
それが「Segawa Modeling」講座の技術力であり、教育力であります。
あと、瀬川先生はこの祭りの中で行われた、模型メーカやモデラの座談会にも登壇されていて、そこで「商業モデラの厳しさ」という観点からお話されていました。
ホビー(模型)を仕事……「お金」にする、というのは難しい。少なくとも単なるアート性・技術だけが求められるのではない(それは前提です)。
例えば、模型業界プロパーだけでない、新しい場所で模型技術を生かすことであったり。
広く模型技術を一般モデラ、初心者モデラに伝える「教育力」を磨き上げることであったり。「教育」という観点は、それだけ重要です。
今回もうひとりの講師として来訪していた、モデラ/模型youtuberの
香坂きの氏も、
「模型モデラ」という職業のブランド力を高めることによって、模型ホビー全体の底上げをしていきたい、という旨のメッセージをされていました。
無論、模型は「模型の技術力とアート性」を工芸として高めていき、ホビーとして楽しんでいればそれでいい。それが模型の本道です。
その一方で、「模型業界」……「ものづくり」文化の先細りを回避するための、模型業界・模型文化の盛り立てに尽力せんと努力する、
企業・プロモデラの方々の努力には、本当に頭が下がります。
それは、一般モデラにはなかなか出来ない努力ですから。
(皆がそれをしろ!といってるわけではありませんよ)
「模型文化」とどのように関わっていくか。
そのひとつの解は、このホビー祭りのような模型展示会であり、あるいはネットでの展開でもあり。
どれかひとつだけが正解ということではありません。
それでも「漠然とした先細りの不安」よりは、こうして問題意識を洗い出し、冷静かつ丁寧に考察し、
未来のモデルライフに繋げていくことが重要なのだな、と思いました。
何せ……
●「一生模型工作します!」
先日
ゆるキャン△とコラボした水曜どうでしょうじゃないですが、
この第三回ごうつホビー祭りを経て、
「一生模型工作します!」という思いを強くしました。
それほど楽しかった祭りでありますし、この模型工作という文化の奥深さを、今一度再確認しました。
自分は、一時期ブランクはあれど、幼少期より模型工作をしてきました。
それは自然なことでしたが、あまりに自然だったので、
「自分の妄想世界を、模型作品で具現化出来る」という幸福を、当たり前のことと思ってしまっていました。
それがどれだけ幸せなことか。自分の両手を動かし、モノを作るということに、己の全力を全開で注ぎ込める、という幸せ。
そう、模型には自分をオールアウトで注ぎ込むことが出来るのです。
まして、それをこうして模型展示会で同好の士(モデラ)、一般の方々に発表することができ、それをこうしてレポート出来る。それもまた喜びであります。
そんなホビー(楽しみ)のスパイラルを、これからも続けていきたいですし、来年(第4回)の開催も是非に希望します。
皆で盛り立て、作っていく祭りです。そう、皆が参加者です。
改めまして、主催の江津理工クラブさん、地球堂模型さん、参加企業・講師の皆さん。参加者の皆さん。ありがとうございました。
来年またお会いしましょう!
(文責:
残田響一)
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