ミレービスケットの謎



先日スーパーで、なんとなく買ってきましたnomura(野村煎豆加工店)の「ミレービスケット」。
「まじめなおかし」とキャッチコピーが効いています。
夜中、わたくしはまじめに仕事を終わらせて、こいつをぼんやりポリポリ食べていました。塩気の効いて、固めの食感です。
その、舌に残るあとを引く塩気と、固くなりすぎず次々に手を出したくなる食感が絶妙で、素朴な味ながら、あと1枚、あと1枚とポリポリ食べてしまいます。

ところで、袋の裏面に、でかいタイトルロゴと合わせて、商品やブランドを紹介していると思しき英文が載っていました。
外国語インチキ勉強が趣味な自分としては、ちょっと読んでみようとしたのですね。ところが、この英文が奇妙としか言いようがないものでした。

英文
mire biscuit is a biscuit with extraordinary oishi omame takusan tabeyo.
and you'll see what difference it has,compared to other regular snacks,
for those who want excitement from snacks,
(原文ママ)

extraordinary oishi omame takusan tabeyo……唐突に挿入されるどう見ても日本語「おいしい おまめ たくさん たべよ(う)」……。
このインパクトが大きくて、ポリポリ食べてたのを一時中断して、こうして日記を書いているわけです。

まず、最初からして良く読めば変。商品名固有名詞biscuitのすぐ後に一般名詞biscuitが来るっていうのも、なんか変です。
そしてoishi omame takusan tabeyoを形容するのに、「extraordinary」とまで言う。これは通常「特別に並外れた」とか「突発的に異常な」みたいな意味です。Specialなどでは表せられない””勢い””を感じます。
なお、ちなみにここでのミレーのスペルはmireですが、「落穂拾い」などで有名な画家のジャン・フランソワ・ミレーのスペルはmilletなので、関係はないのでしょう。
じゃあなんでビスケットの商品名はミレーなのかって言われたら、謎としか返せないのですが……。

また、「他の菓子より美味しいよ」を表現するのにcompared toを使うっていうのもどうなのかと。
そりゃ「比較する」って意味ですが、じゃあmore delicious than~とかでは……っていうかそもそも、あえてわざわざ世のお菓子と比較せんでも、っていうところであります。You ate it,so tasty.でええやん。
今、コンマ「,」を使いましたが、ミレー英文に出てくる怒濤の語尾コンマも何?って話であります。ピリオドじゃなくてコンマ。どんどん文と文が繋がっていく。
excitementという言葉あたりも、直訳すれば「スナック菓子に興奮を求める者のために」っていうところですが、むしろ翻訳をひらいて「世のあまた在る菓子に飽き足らない、興奮を求める真の漢たちに捧ぐ……」って意訳の方が、文意としては正しいのかもしれません。何が正しいのかっていうのはもはや霧の中に包まれていますが。ちなみに、文章はまたもコンマで唐突に断ち切られています。

機械翻訳なんでしょうなぁ……。社内で誰か「これおかしくありませんか?」って言ってあげられる人はいなかったのでしょうか。
そして何より、oishi omame takusan tabeyo……。このインパクトがあまりに凄い。

高知県の野村煎豆加工店さんは、その社名の通り、ホームページを見ると、豆の加工品を手広く手がけていらっしゃいます。
このミレービスケットは、もともと明治製菓の商品だったのですが、現在、名古屋の三ツ矢製菓がビスケット生地の製造を担当、高知でビスケット生地を揚げて、ミレービスケットブランドとして販売しているとのこと。高知の味、ソウルフードとして親しまれているとか。
もちろんミレービスケットに豆は入っておりません。
ですが、野村煎豆加工店さんとしては、自社の基礎となる「豆」への意識を常に忘れたくないのでしょう。
わたしは仕事終わりにポリポリミレービスケットを食べていましたが、日本においてポリポリ食べるスナック菓子の元祖はやっぱり豆だったわけです。そのスナック文化を現代において健全に進化させていきたい……という気持ちが伝わってきますね。oishi omame takusan tabeyoからは……

と、ここまで調べてしまうくらいインパクトは強かった。それを見越してのこの英文なのか?と勘ぐってしまうのは陰謀論めいた深読みかしら。ただ、少なくともわたくしは、またスーパーでミレービスケットを買ってしまいそうな勢いではあります。
「まじめなおかし」ミレービスケット。そのまじめさには、どこか魔力が潜んでいないでしょうか。